ラバーダム防湿とは?
こんにちは。左京山歯科・矯正歯科クリニックの非常勤で勤務しております妹尾です。
皆さんはラバーダム防湿をご存じでしょうか?
今回は、日本ではまだまだ普及率が高くないラバーダム防湿について、歯科医院においてラバーダム使用率が伸びない理由をお伝えしたいと思います。
ラバーダム防湿とは
ラバーダム防湿とは、『ラバーダムシート』というゴム性のシートを処置を行う歯に被せることで、処置を行う歯を、それ以外のお口の中の環境と隔てる操作のことをいいます。
この操作の主な目的は、お口の中に存在する細菌や唾液から処置を行う歯を隔離し守ることです。
お口の中には、種類にして約300〜700種、数にして歯をよく磨く方で約1000億〜2000億、磨かない方では約1兆もの細菌が存在していると言われており、
これらの細菌は処置中の歯の再感染のリスクになります。また、唾液は、樹脂や金属の詰め物をくっつける時に使用する接着剤との相性が悪く、唾液に晒された歯には樹脂や金属はくっつきにくくなります。
治療する側のラバーダム防湿よるメリット
このように、お口の中の環境は、なにも対策せずに歯科治療をするにはあまり適していない環境ではありません。
スポーツに例えるなら、敵地<アウェー>で試合をしているようなものなのです。
このような状況を改善するためにラバーダム防湿が使用されます。
ラバーダム防湿には、私たち歯科医師にとって主に以下の利点があります。
①術野(処置を行う歯)の感染・湿潤の防止
②術野の明視化
③器具・除去した金属や破片の誤飲の防止
④処置に使用した薬剤の口腔内への漏出防止
⑤回転切削器具による軟組織の傷害防止
つまり、ラバーダム防湿を行うことで、敵地であったお口の中に本拠地<ホーム>を築くことが可能になります。
ラバーダム防湿における最大の利点がこの上記①であり、例えば、歯科治療の中でも歯の根っこ部分の治療を行う歯内治療においては、ラバーダム防湿はその有無が治療結果を左右するという報告があります。
(ラバーダムの使用が初期根管治療を受けた歯の生存率に及ぼす影響:全国規模の集団ベースの研究)
https://www.whitecross.co.jp/pub-med/view/25175849
また、上記④、⑤も同様に重要で、ラバーダム防湿を行わない状態で治療をすると、口腔粘膜、舌、口角、口唇など様々な部位に気を遣う必要があり、注意力が分散してしまいます。
ラバーダム防湿を行うことで治療部位に集中することができ、結果的に治療効率向上につながります。
治療を受ける側のメリット
しかし、患者様の中には、ラバーダム防湿について、痛そう・口を覆うなんて息ができなくて苦しそう、など、マイナスのイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実はそのイメージとは反対に、ラバーダム防湿は我々歯科医師側だけでなく、患者様側にも多くの利点があります。
①治療中の不快感(口の中に水が溜まるなど)の排除
②開口の補助
③嘔吐反射の防止
ラバーダム防湿を実際に行った患者様からは、安心感がある・眠くなる、など好ましい感想を多くいただきます。ラバーダム防湿は歯科医師にも患者様にも優しい操作なのです。
日本での普及率について
そんなラバーダム防湿ですが、日本の歯科界においての普及率は高くなく、2002年に日本ヘルスケア研究会によって行われた調査では、回答者の約半数がラバーダムを実施しないと回答しています。
ラバーダムが使用されない理由には、
①患者さんが嫌がる
②使用するのが面倒
③治療がしにくい
④コストがかかる
などがあげられます。
この中でも①が最も見られる理由ですが、この考えとは裏腹に、前述した通り実際にラバーダム防湿を使用した患者さんは好意的であることが多いです。
一方で④は非常に逼迫した問題で、日本の歯科治療は国民皆保険制度によって支えられていますが、この保険点数の中に、ラバーダム防湿という項目はありません。
この点において、ラバーダム防湿を実施したくてもできないという歯科医院が存在することも致し方のないことであるとも言えます。
最後に
このように、ラバーダム防湿は歯科治療を行う上で優れた操作である一方で、まだまだ周知されていない操作でもあります。名古屋市緑区の左京山歯科クリニックでは、ご希望があれば、ラバーダム防湿下での処置も可能ですので、ご興味のおありの患者様はどうぞご気軽にスタッフまでご相談ください。