ソケットリフトとは??
こんにちは、名古屋市緑区の左京山歯科クリニック院長の宮崎です。
インプラントの上顎の治療のオプションにはソケットリフトとサイナスリフトの2種類があります。以前にサイナスリフトの説明をしましたので今回はソケットリフトについて説明したいと思います。サイナスリフトについてはリンクを参考にしてください。https://www.sakyoyama-dc.com/blog/implant-treatment/post-291/
ソケットリフトって?
ソケットリフトとは上顎洞底挙上術ともいいます。上顎には上顎洞という鼻とつながっている副鼻腔がありインプラントを行う時に上顎洞までの骨の厚みが足りない時に行う処置をいいます。この上顎洞までの骨の厚みが少ない場合に用いる処置にサイナスリフトとソケットリフトの2種類の処置があるのです。
ソケットリフトの術式はまず
①インプラントを行う部分の歯茎を切開し開きます。
②専用のドリルで上顎洞底2ミリまでドリルを行います。上顎洞まで7ミリであれば5ミリドリルします。
③所定の高さまで慎重にオステオトーム(専用の器具)にて槌打(ついだ)し洞底骨壁を若木骨折させる。
という手順で上顎洞帝を挙上し予定してたインプラントを埋入するのです。
ソケットリフトを選択する基準は??
上顎洞底下の骨量に基づく治療オプションでMischの分類(Mish,CE,1987)という分類があります。それによると、上顎洞までの距離が12ミリ以上は特に何もなし。10~12ミリはソケットリフト、5~10ミリはサイナスリフト/ソケットリフト、5ミリ以下はサイナスリフトと分類してあります。
また「上顎洞底の高さと ソケットリフト後のインプラントの成功率の関係」(Rosen PSら1999)の論文によると7ミリ以上でインプラント残存率は96%以上というデータもあります。
さらにソケットリフトの挙上量を調べたKomarnyckyjとLondon;JOMI;1997によると挙上量はサイナスリフトが10ミリ以上だったのに対しソケットリフトは3.5ミリだったのです。
以上のことから考えて左京山歯科クリニックではソケットリフトは上顎洞底粘膜挙上量3~4ミリが安全挙上量と考えます。そのため7ミリ以上の骨の厚みがある場合にはソケットリフトを選択し5~7ミリはサイナスリフト同時埋入、5ミリ以下ではサイナスリフト2次的埋入を選択します。
ソケットリフトの短所は?
ソケットリフトの1番の問題はブラインドの手術だということです。つまり盲目的な処置で見えない処置になるので手指感覚で行う手術になるのです。 そのため
①上顎洞の形態が確認できない(複雑な隔壁や粗造な洞底など)
②上顎洞粘膜の状態が確認できない(上顎洞粘膜の癒着、極端に薄い場合がある)
③穿孔(穴が開く)した場合においても小さい場合は確認できない
つまり賭けの手術となるのです。
ソケットリフト以外の方法は??
他にはサイナスリフトがありますし、最近ではショートインプラントと言って短いインプラントを埋入する方法もあります。サイナスリフトもショートインプラントも長所と短所があります。自分にはどちらが合うのかを主治医の先生と一緒にしっかり話し合いましょう。
まとめ
ソケットリフトは主に1歯欠損に対して行われることが多いと思います。2歯以上だとソケットリフトよりはサイナスリフトがファーストチョイスになることがほとんどです。そうなると費用も時間も体にかかる侵襲も大きくなります。
とにかく歯を失うということは歯を支えている骨も失うということなのです。特に日本人は欧米の人と比べても骨が薄くインプラント治療が難しい場合がほとんどです。歯がなくなったらインプラントすればいいかと安易に考えてると、インプラントだけでは済まず上顎洞底を上げる処置が必要になって、そこまでしないといけないのかとあきらめる人も多くなってきます。
上顎にインプラントを考える場合は上顎洞の距離をきちんと計算して最適なインプラントを埋入することが大切です。どうしても下顎よりも上顎の方がインプラントの成功率は低くなります。きちんと自分に合った処置は何かを主治医の先生と一緒に考えていきましょう。