H29.7.5 タービンの滅菌の話
こんにちは、名古屋市緑区の左京山歯科クリニックの院長の宮崎です。
また衝撃的なニュースが飛び込んできましたね。
全国の歯科医療機関の半数近くが、歯を削る医療機器を患者ごとに交換せずに使い回している可能性があることが、2017年の厚生労働省研究班(代表=江草宏・東北大学歯学部教授)の調査でわかった。
数年前にも同じような記事が新聞に出て少しだけ世間を騒がせました。歯科の場合歯を削るタービンや5倍速エンジン、コントラなどがあります。特にエアータービンは空気の力で回してます。そしてタービンが止まる時にサックバックと言って陰圧になり患者の唾液や血液がタービン内に逆流すると言われているのです。だから滅菌が必要なんですね。
ただしこのタービンの滅菌は通常のオートクレーブではちょっと難しいのです。そしてタービンやエンジンはオイルをさす注油をしないといけません。ですのでタービンなどの滅菌はとても大変なのが現実です。
左京山歯科クリニックではダックユニバーサルというタービン、エンジン専用の滅菌器を使用しています。今のところ全自動ですべての工程をやってくれるのはこれしかないようです。
左京山歯科クリニックの口腔外科担当の古橋先生によると愛知医科大学病院の口腔外科でもこれを使用しているとのこと。
でもこのダックユニバーサルは非常に高価な機器で100万くらいしますし、外国製でもあるので結構故障します。すぐに代品を持ってきてくれるからアフタサービスはいいのですがこの辺が玉に瑕ですね。このダックユニバーサルは全行程を15分程度でやってくれるのでタービンの数をそこまで揃えなくても患者さんごとに使いまわししなくて済みます。
このタービン問題は、ダックユニバーサルを買うかタービンやエンジンを患者さんごとに取り替えるために数をたくさん揃えるかしか方法がありません。左京山歯科クリニックでも6台のチェアーがありそのうち治療に使用するのは4台ほどですがそれでもタービン、エンジンなどは20本以上もあります。またこのタービン、エンジンもけっこう高価で1本10万弱します。本数揃えるのもけっこうお金かかるんですよね〜毎日使うので1年半くらいすると軸ブレや故障してきて修理や買い替えになります。
いま歯科はコンビニよりも多いと言われていてワーキングプアという言葉さえ出てきます。東京の方では歯科医院がありすぎて経営が難しい歯医者さんでは患者さんに使うグローブをもう一度洗って干して使うというのも聞いたことがあります。つまり経営が難しい歯科医院だと滅菌や消毒にお金をかけれないのです。
歯科は皆さんどう思っているか分かりませんが血液を扱うので内科ではなく外科の範囲に入ります。そのためどうしても滅菌や消毒に力を入れなければいけません。しかし先程説明したように経営がうまくいってない歯科医院ではダックユニバーサルやタービンを何本も揃えるような投資は行えないのが現状です。さらに歯科の場合は医科よりも保険点数が低く抑えられています。歯科の再診料は43点程度。つまり430円です。その中で今はディスポ(使い捨て)のコップや3ウェイシリンジのチップ、エプロン、そして基本セットの滅菌など行わないといけないのです。
なんでもそうですが安心安全にはお金がかかります。なんでも安くすればいいという風潮は僕は危ないと思っています。特に医療は患者さんの命に関わったり人生に関わります。安易に治療費を安くすればそのしわ寄せは患者さんの目に見えない滅菌や消毒の方に行くと思います。特に日本の歯科治療費は世界的に見て例を見ないほど安いのが現状です。その中でどの歯科医院も頑張っているのが現状です。適切な医療費を払って安心安全な治療を行う。それが
今はなんとかできてますが数十年後はどうなってるかは予想ができません。少子高齢化や医療費の増加などこの国の抱える問題は本当に多いです。タービンも滅菌の問題も奥が深いですね。