歯周病を放置すると全身にも影響が!?歯周病と身体の病気について
こんにちは、名古屋市緑区の左京山歯科クリニック院長の宮崎です。
歯周病と身体の病気が関係していることをご存じでしょうか。良くTVでも放送されているのは糖尿病と歯周病の関連が多いと思います。実はそれ以外にも心臓の病気やメタボリックシンドローム、飲み込む力が落ちている高齢者では誤嚥性肺炎、また妊娠されている場合は早期低体重児出産との関連も言われています。他には喫煙、ストレス、ホルモンのバランスなどの歯周病との関連も報告されています。
まずは糖尿病と歯周病についてです。糖尿病と歯周病は、糖尿病があると歯周病になりやすく、血糖値のコントロールが悪いと歯周病の状態を悪化させ、また重症な歯周病を放置すると糖尿病の発症リスクや、血糖値のコントロールを悪化させる可能性があると言われています。つまり、どちらかの状態が悪いともう片方の状態も悪くなるという、両方が相互に関連していることが報告されています。糖尿病は放置すると血管の障害が出たり、目の障害や、腎臓に障害が出たりなど、身体全体と関連してくる病気です。こういった糖尿病の状態が悪くならないよう、お口の環境も整えていくことで身体の健康、そして歯の健康も守ることができます。
また妊娠されていて歯周病の状態が悪いと、早期低体重児出産といって、赤ちゃんが通常お母さんのお腹の中にいるべき期間よりも、早い段階で出産になってしまう可能性も報告されています。妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンの分泌が活発になりやすく、このエストロゲンは歯周病の原因菌のなかでもより悪化させやすい菌の餌になっているため歯周病が悪くなりやすいです。そして活発になった菌が出す毒素が血液によって運ばれ子宮に届くと子宮の筋肉を収縮させることで、通常より早い低体重児の出産の原因になってしまいます。
タバコと聞くと肺がんなどは有名で歯周病との関係はあまりなじみがないかもしれません。しかしタバコに含まれるニコチンは血管収縮作用といって、血管が狭くなることで血液が流れる量が減ってしまう作用があります。そうすると本来歯茎に届くべき酸素や栄養分が行き届かなくなり、傷ができても治りが悪くなりやすく、一度歯周病になると進行が早くなると言われています。
喫煙と糖尿病は歯周病のリスクファクターと言われております。リスクファクターとは日本語で危険因子と言われ歯周病を悪化させる要因になります。
喫煙者や糖尿病の方は歯周病になるリスクが通常の方より高いので歯周病の管理をきちんと行いましょう。
歯周病は他の生活習慣病と同じでサイレントディジーズと言われ静かに進行します。歯周病も1年や短期間でなる病気ではなく10〜20年くらいの長い年月かけて起こる病気なので、歯周病などの生活習慣病を予防するには常日頃のケアが大事になってきますので歯科医院での定期的な検診と家でのセルフケアが1番重要という訳です。
最後に誤嚥性肺炎ですが最近はこの誤嚥性肺炎という言葉も一般的になってきたと思うので聞いたことがある方もいると思います。
誤嚥性肺炎とは、身体の抵抗力が落ちていて誤って肺や気管支に食べた物が入ってしまい口腔内の細菌が原因となり起こる肺炎のことを言います。
高齢者になるとむせる力が落ちて誤嚥しやすくなるので誤嚥性肺炎が増えると言われています。
興味深い話をしましょう。こちらの図をご覧下さい。
これは2020年10月から2021年9月までの日本人の死因の原因と人数を調べた調査で、1位はがんで2位が心疾患、そして、いつになったら日常が戻ってくるのか待ち遠しい新型コロナウイルスは第14位です。
そして肺炎が5位で6位が誤嚥性肺炎なのです。肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると脳血管疾患を超えて病気では第3位になります。
新型コロナウイルスで亡くなる方も確かに多いと思います。糖尿病よりも多いので病気として侮ることはできません。しかし誤嚥性肺炎で亡くなる方は実は新型コロナウイルスよりも全然多いという事実を知って欲しいと思います。
まとめ
歯周病は歯を失う病気だけでなく全身と関係があることが最近分かってきました。口は体内と通じる入り口です。心臓に病気がある方はお医者さんから出血を伴う処置をする際(例えば歯石取りや抜歯など)に必ず抗生剤を飲んでからやるように言われます。つまり口腔内での出血で口腔内の菌が全身や心臓に回り悪さをする可能性があるからです。つまり歯周病などで常に歯茎から血が出やすい人は口腔内の細菌が全身を回っているという事です。菌が全身を回れば長い時間をかけて色々な病気を引き起こすという事で、歯周病が全身の健康と関係があるという訳になります。
歯周病予防のためにも定期的に歯科医院で歯周病の基本検査や磨き残しがないかのチェック、歯石などの除去を行いましょう。