あなたは大丈夫?自分ではなかなか気づけない睡眠時無呼吸について
こんにちは、左京山歯科・矯正歯科クリニックの院長の宮崎です。
皆さんは、毎日、快適な睡眠を得られていますでしょうか?
ヒトが健康的な生活を営むには十分な睡眠が必要不可欠です。日中の活動によって疲弊した身体また脳を休め回復させる心身のリフレッシュ、学習した内容の記憶への定着、身体の成長、これらは睡眠中に得られるものであり、睡眠はとても重要な時間です。良質な睡眠を得るためには、規則正しい睡眠習慣を身につけることや十分な睡眠時間をとることが基本ですが、睡眠時無呼吸という病気がある場合には注意が必要になります。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸とは、睡眠中に呼吸が止まることによって、何度も目が覚めてしまい、深い睡眠が得られない状態のことをいいます。睡眠時無呼吸がある方は、十分な睡眠時間をとったつもりでも眠りが浅く、日中に強い眠気を感じて居眠りをしてしまったり、体の怠さが生じたりします。重症のまま放置して未治療の方の中には、大事な会議や試験といったように眠ってはいけない状況においても無意識に居眠りをしてしまったり、車の運転中に居眠りをしてしまい交通事故などの取り返しのつかない原因となってしまったりする可能性が指摘されています。また、睡眠時無呼吸がある方は、いわゆる生活習慣病といわれるような高血圧や糖尿病を合併しやすいことや、不整脈、心筋梗塞、脳卒中などの致死的病気を発症しやすいことも知られており、健康的な生活を維持するために睡眠時無呼吸は早期診断と継続的な治療が重要とされる病気です。最新の報告では、日本人の睡眠時無呼吸の有病者数は、中等症以上では約940万人、軽症以上では約2,200万人(2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドラインより引用)とされており、現代人にとってかなり身近な病気の一つになっています。
睡眠時無呼吸の特徴
ご家族や同居人から、睡眠中に大きなイビキや呼吸が止まっていることを指摘されたことはありませんか?または、ご家族や同居人の大きなイビキによって自分が眠れずに困っているということはありませんか?睡眠時無呼吸の特徴の一つが、この大きなイビキです。イビキは、鼻やのどの奥から首にかけて存在する上気道という空気の通り道が、睡眠中に狭くなることで、呼吸をしたときの空気の流れが乱れてしまい、周囲の組織が振動することによって引き起こされる音になります。このような状況では、十分な呼吸を行い体に必要な酸素を取り込むことができません。またイビキが生じる状態よりも気道がさらに狭くなったときには、気道が完全に閉塞してしまい呼吸ができない「無呼吸」の状態が発生します。睡眠時無呼吸の方では、呼吸が停止する「無呼吸」や呼吸が弱くなる「低呼吸」が睡眠中の無意識な状態の時に繰り返し起きています。本人は気付いていなくても、ご家族から途切れがちに続く大きなイビキを指摘された場合には注意が必要です。
睡眠時無呼吸のメカニズム
昼間の起きている時に、イビキをかきながら呼吸し生活をしている方はいないはずです。ではなぜ?イビキは、眠っているときにだけ生じるのでしょうか?
空気が通るスペースである気道は、顎や首の骨(硬組織)によってできる空間の中に存在し、舌や首の肉(軟組織)に囲まれたチューブのような構造をしています。例えば、日常で使用するホースが太いほど水は流れやすく、細いと水が流れにくくなるのと同様に、気道も太いほど空気の流れが良く、狭いと空気の流れが悪くなります。気道の太さは、気道周囲の硬組織や軟組織のバランスによって影響され、肥満や顎の大きさが関連します。つまり、肥満の方は顎や首のまわりの脂肪が多く「顎の大きさに対して、舌や首の肉の量が大きいため」に、軟組織によって気道が潰され狭窄した気道となります。痩せていても顎の小さい方、下顎が後方に位置している方は「舌や首の肉の量は少なくても、顎の大きさが小さいため」に、同様に軟組織によって気道が潰され狭窄した気道となります。これら背景によって、通常よりも気道が狭窄した状態にあることが睡眠時無呼吸の原因となります。昼間は気道が狭窄した状態であったとしても、気道を拡げる筋肉が活動しているため気道の開在性が維持されて無呼吸やイビキを生じることはありませんが、夜間の睡眠中には、気道を拡げる筋活動が低下するため(レム睡眠期には筋活動が消失する)、狭窄した気道はチューブ状の形態を維持することができなくなり、空気の流れが悪くなった結果、イビキや無呼吸が引き起こされる。これが、睡眠時無呼吸が生じるメカニズムです。
睡眠時無呼吸による様々な悪影響
睡眠時無呼吸によって、睡眠中に十分な酸素を体に取り込むことができない状態では、苦しくなるために目が覚めてしまい(中途覚醒)、十分な睡眠が得られず昼間の眠気につながります。また、身体疲労の回復、身体の成長、脳の休息にも良好な呼吸は必要であり、睡眠時無呼吸はこれらに悪影響をもたらします。長時間また頻回の無呼吸が生じると体は反応し、脳に酸素をできるだけ多く送るために、脈拍(心臓の鼓動)を早くすることで血液の流れを増やそうとします。このような脈拍や血流の変動が血管を弱らせ、高血圧や不整脈、心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすきっかけになるため、睡眠時無呼吸は早めの診断と治療が必要不可欠です。
睡眠時無呼吸の治療
睡眠時無呼吸が疑われる方は、内科や耳鼻咽喉科などで行われる睡眠検査を受けていただくことで、睡眠中の呼吸状態や血液中の酸素濃度を計測し、睡眠時無呼吸の有無、重症度を診断することが可能です。睡眠時無呼吸が認められた場合には、その重症度に応じて機械で圧力をかけた空気を気道に送るCPAPという治療や口腔内装置(マウスピース)による治療が選択されます。
歯科における口腔内装置(マウスピース)による治療は、睡眠時に下顎を前方に保つマウスピースを装着することにより、気道の圧迫が緩和され、狭くなった気道が拡大されることで、イビキや無呼吸の発生を予防します。このマウスピースは睡眠時無呼吸に対して有効な治療法ですが、上下の歯を利用し下顎を前方に保つ装置であるため歯に負担が生じることがあり、マウスピースの長期使用にあたり虫歯や歯周病への継続的な管理が必要です。
最後に
当院では、地域の医科医療機関と連携し、睡眠検査にて睡眠時無呼吸と診断された患者さんに対して専門医が口腔内装置(マウスピース)治療を行うとともに、イビキや無呼吸でお困りの方を睡眠検査が行える施設へご紹介させていただくことが可能です。
お困りの方は、ぜひ一度、左京山歯科・矯正歯科クリニックにご相談ください。