高齢者歯科について
こんにちは、名古屋市緑区の左京山歯科・矯正歯科クリニックです。
どんな生物であっても歳を重ねていくと様々な面で機能の低下というものは現れてきます。
口腔内においてもそれは例外ではありません。
そこで今回は高齢者歯科についてお伝えしたいと思います。
日本における高齢者の定義
まず高齢者の定義ですが、
わが国では65歳以上を高齢者、そのうち65~74歳を前期高齢者、75歳以上は後期高齢者と定義しています。
現在、日本の高齢者は25%を超え約4人に1人が高齢者です。
我々誰もが高齢者になることになり、高齢者歯科知識をつけていくことが必要だと思われます。
口腔内の環境はどう変わる?
高齢者になると若年者と歯の解剖学的、生理学的にも大きく異なります。
そこで本日は高齢者の口腔全体を解説していきたいと思います。
・味覚の変化(味を感じにくくなる)
そもそも味覚とは何でしょうか。味覚とは塩味、甘味、酸味、苦味、うま味の事を意味します。
高齢者になると味覚の閾値が上昇します。「閾値」とは、ある現象や過程の起点や境界を意味する言葉です。
一般的には「しきい値」と訳されることが多いですが、「閾値」と呼ぶこともあります。つまり閾値が上昇するとは味が感じにくくなるという事です。
それはなぜでしょうか。まず味覚を感じる細胞である味蕾の減少があげられます。
味蕾とは舌に存在する味覚を感じる細胞のことです。高齢者になると体の大抵の細胞は減少します。
つまり味覚を感じるセンサーが減ってしまうことになります。
また唾液腺に存在する細胞が減少するため唾液の量も減少します。唾液は上で説明した舌に存在する味蕾に味成分を行き渡らせる役割がありますが、唾液の分泌量が減ることで味が行き渡りにくくなることも一因です。また栄養成分の亜鉛が不足すると味覚が感じにくくなるともいわれています。
・唾液の分泌が減ってしまうと
イメージしやすいものから説明すると口腔乾燥が起こります。
口腔乾燥がおこると口腔内の細菌が増加します。なぜなら唾液の分泌量が十分であるならば唾液の自浄作用によって汚れや細菌が歯や歯周組織から流れ落ちることに加え、
唾液の殺菌作用によって細菌量が減少する機会が失われてしまうからです。
それにより虫歯や歯周病にかかってしまうことやこれらによる口臭の原因になります。
これは高齢化による唾液の分泌量の減少だけでなく、口呼吸によっても引き起こされます。
近年のマスク生活によって口呼吸により口臭の相談が増えているのも口呼吸による口腔乾燥が原因であることが多いです。
・唾液に含まれるムチンが重要
唾液はねばねばしている、つまり粘長性があります。それはムチンという成分の為です。
このムチンが重要な役割をしています。ムチンは動物由来の高分子糖タンパク質で,消化管・気道の粘膜上皮や唾液腺などで産生される粘液の主成分であり 、
物理的バリアとしての粘膜保護や潤滑作用(食べ物を唾液で濡らし、喉を通りやすくする作用)に加え口腔内の湿潤作用もあります。
他の唾液成分には殺菌作用をもつラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼ、リゾチーム、免疫グロブリンsIgA、シスタチン、ディフェンシン等があります。
つまり唾液には様々な成分が含まれとても重要な役割を果たしていることがわかります。
唾液を増やすことはできる?
少しでも唾液量を維持、増やすためには十分な水分を日頃から摂取することが大事なことになります。
また唾液腺マッサージといって日頃からマッサージをすることも唾液量を維持することにつながります。
やり方は耳の下の少し柔らかいところに耳下腺という最も大きな唾液腺があるためそこを人差し指を当て、指全体で優しく押してください。
この動作を5〜10回程繰り返します。簡単ですので是非皆さん試してみてください。